「AI時代にIT業界に求められるスキルや人材は何か」という1万回は聞いた問いをAIと考えた。-結局のところ、資格≠仕事が出来る人ではない―

会社の方針資料を読んで、感じた違和感

タイトルが少し強いので初めに断っておきますが、この記事は資格取得を批判する意図はありません。むしろ資格取得は積極的に行うべきです。

このプロジェクトの発想は、自社の今後の方針や人材育成に関する資料を確認したことから始まりました。

資料の中では、DX、AI活用、企業の業務基盤を支えるクラウド型プラットフォームの資格取得者増加、そして今後求められるスキルや人材像が示されていました。

そこで最初に感じたのは、会社が今後、AIやDX、業務プラットフォームを扱える人材を増やしたいと考えているのだろう、ということでした。当然の話です。自分自身、資格試験の類が嫌いなわけでもありません。

しかし、その内容を読み進めるうちに、単に資格を取ることや、AIを正しく理解して説明できることが、本当に目指すべきDX人材像なのかという違和感が生まれました。

聞き尽くされたその問いを、今さらAIと一緒に考えてみた

「AI時代にIT業界で求められるスキルや人材は何か」

この問いは、もう数えきれないくらい語られています。ニュースにも、セミナーにも、SNSの投稿にも、似たような答えが並んでいます。「これからはAIリテラシーが大事」「AIを使いこなす力が問われる」。どれも聞き飽きた言葉です。

正直、今さら自分が考えたところで、誰かがすでに言ったことをなぞるだけになるだろうという予感がありました。それでも、頭の中に残った違和感を放っておくのも据わりが悪かったので、AIを壁打ち相手にして、あらためて考えてみることにしました。

今までITの資格取得は、技術の証明としてだけでなく、そもそも取得の有無に関わらず相応の理解レベルにないと業務遂行が困難でした。
一人で唸っていても堂々巡りになりそうだったので、思っていることをそのままAIにぶつけて、返ってきた言葉に対してまた自分の考えをぶつけ返す、というやり取りを繰り返しました。「資格を取ることは何のためか」「AIにできることとできないことの境界はどこか」「自分がこれまで仕事で評価されてきたのはどんな瞬間だったか」。そういう問いを、何度も往復させました。

AIはもう、知識だけでは勝てない

AIはすでに、用語の説明、体系立った知識の整理、定石の提示、文章の作成、要約、比較、リスクの洗い出し、改善案の生成を高い水準で行えます。試しに、資料に出てきたような資格の勉強内容を、そのままAIに聞いてみたところ、参考書を1冊読むより早く、しかも分かりやすい言葉で返ってきました。

これは、AquaDraftを個人で開発しているときにも、日々実感していることです。知らない技術のとっかかりを聞けば数秒で返ってきますし、コードのバグを説明すれば原因の見当をつけてくれます。かつては何時間もかけて公式ドキュメントを読み込んでいたようなことが、今は会話ひとつで済んでしまいます。

つまり、資格が従来証明してきた「知識を持っていること」の価値は、AIによって相対的に下がっています。知っているかどうかで差がついた時代は、静かに終わりつつあります。

では、AI時代に本当に価値を持つものは何なのか。

資格の代わりに、実績で示す

その問いを考える中で行き着いたのは、資格ではなく実績であり、さらに言えば、実際に動く仕組みを作り、運用し、その中で得たノウハウであるという考えでした。

AIに同じ資格の勉強内容を聞いても答えられなかったこと、あるいは答えは返ってくるものの、実務ではまったく役に立たなかったことがいくつかあります。

  • この業務は本当に自動化してよいのか、それとも人が確認すべきリスクが残るのか
  • どの判断は人間に残すべきか
  • どこまで自動化を進めると、かえって現場が混乱するか
  • どのログを残しておけば、後から問題の原因を追えるか
  • 一度作った仕組みを、実際に使われ続けるものにするには何が必要か

こうした判断は、資格や一般知識をいくら積み上げても分かりません。実際にサービスを立ち上げ、動かし、壁にぶつかり、直しながら、はじめて手に入るものです。

AquaDraftの開発でも、同じ構図に直面してきました。後発でツールを作るとき、機能の数や素材の量では、すでに何年も先行しているサービスに勝てません。だから、UIを地道に磨き込むという、地味だけれど実際に効く一点に絞って戦ってきました。資格の話も、これと構造がよく似ています。知識の量で戦っても、AIには勝てない。だったら、実際に手を動かして、動くものと、そこから得た経験で示す。

資格を取ることを否定するつもりはまったくありません。ただ、それだけでは足りない。資格の隣に、「実際に動かして得た実績」を並べたい。今回の一連の問いを通して、その考えがはっきりと固まりました。

実践の場に選んだのはAquaDraft

この答えを、頭の中の理屈だけで終わらせるつもりはありません。

そこで、すでに開発・運用している個人開発ツール「AquaDraft」を、実践の舞台にすることにしました。

AquaDraftは、趣味であるアクアリウムを題材にした水槽レイアウトシミュレーターです。すでにツール本体を公開しており、公式ブログも運営しています。3Dモデルを一つひとつ作り込み、機能を積み上げ、英語対応まで済ませてきた、いわば手塩にかけて育ててきたサービスです。

今回の目的は、AquaDraft本体を新しく作ることではありません。目的は、AquaDraftを開発し、運用し、改善し、発信するという一連の業務に、「資格ではなく実績で示す」という答えをそのまま当てはめることです。AIと自動化を使って、これまで自分が手作業でやってきた運用業務を、どこまで人間の手を離れても回る状態に近づけられるか。それを、絵に描いた餅ではなく、実際にやって見せます。

すでに実在していて、自分自身が愛着を持って育ててきたサービスだからこそ、嘘のない検証になると思っています。

これから自動化していくこと

対象にする業務は、たとえば次のようなものを考えています。

  • 開発ログの整理やIssue作成
  • 改善案の抽出
  • リリースノートや公式ブログ記事の下書き作成
  • アクセスログの確認やエラー検知
  • 週次の運用レポート作成

どれも地味で、華やかさのかけらもない業務です。ですが、実際のサービス運用を支えているのは、こうした日々の細かい積み重ねです。ここにAIと自動化を組み込みながら、どの作業を任せられたか、どの判断は人間に残すべきだったか、AIがどこで間違えたかも含めて、包み隠さず記録していくつもりです。

うまくいった話だけを並べるつもりはありません。AIに任せてみたら思わぬ判断ミスをした、任せて楽になったつもりが逆に確認の手間が増えた、そういう「やらかし」も、この連載ではそのまま書いていきます。きれいな成功譚だけでは、ノウハウとしての価値がないからです。

この連載について

この連載は、AquaDraftの運用を題材に、AI・自動化の実践記録を綴っていくものです。決まった曜日に更新する形式ではなく、AquaDraft側で自動化が実際に進んだタイミングに合わせて、不定期に更新していく予定です。

次回以降は、実際にどの業務から手をつけたか、どんな仕組みを組んだか、そこで何が起きたかを、具体的に書いていきます。資格ではなく実績で示す、という今回出した答えを、これから一つずつ形にしていきます。