AquaDraft Ops Automation 要求分析書(ADO-RA-001)

文書番号ADO-RA-001版数1.1最終更新2026年8月30日現在Phase 1 素材追加業務の自動化
この記事について
連載「AI時代にIT業界に求められるスキルや人材は何か」で進めている、AquaDraftの運用をAIで自動化するプロジェクトの成果物です。実際に作成した要求分析書(文書番号 ADO-RA-001)を、体裁を変えずそのまま公開しています。本文が「である調」なのは、社内で使う設計文書の様式に合わせているためです。
2026年8月30日に版数1.1へ改訂しました。業務の洗い出しに3件の漏れが見つかったためです。何をなぜ変えたかは本文の改訂履歴に残しています。
プロジェクトの経緯はAI時代にIT業界に求められるスキルや人材は何か -実践編 #1-をご覧ください。
この分析を受けて作成した要件定義書(ADO-RD-001)もあわせて公開しています。
全体スケジュールとタスク一覧はプロジェクト計画書(ADO-PP-001)にまとめてあります。

文書管理情報

項目 内容
文書番号 ADO-RA-001
文書名 AquaDraft Ops Automation 要求分析書
版数 1.1
作成日 2026-08-20
最終更新日 2026-08-30
作成者 Claude(実行・分析担当)
承認者 プロジェクトオーナー(やまかず)
承認状態 未承認
機密区分 公開(WordPress上で公開管理する。秘匿値・個人情報は記載しない)
関連文書 ADO-PL-001 企画書 / ADO-RD-001 要件定義書

改訂履歴

版数 日付 改訂者 改訂内容
1.1 2026-08-30 Claude 業務一覧の洗い出し漏れ3件(BIZ-16からBIZ-18)を追加し、工程まで分解(3.7)。課題ISS-020からISS-022、要求REQ-025からREQ-033を追加。ISS-013からISS-019が要求へ展開されないまま残っていたのを是正し、カバレッジ表(5.3)を全課題へ拡張。発生時点の報告義務(6.3)を新設。対象業務領域を6領域へ。ドメインとサーバーの契約更新、アフィリエイトと収益の管理をスコープ外として明記
1.0 2026-08-20 Claude 初版作成。企画書(ADO-PL-001)およびヒアリング結果を正式様式へ展開

1. はじめに

1.1 本書の目的

本書は、個人開発サービス「AquaDraft」の運用業務を対象に、現行業務(As-Is)を分析し、そこから導かれる課題と要求事項を体系的に整理することを目的とする。

本書で確定した要求事項は、要件定義書(ADO-RD-001)において機能要件・非機能要件へ展開される。本書は「何を求めるか」を定義するものであり、「どう実現するか」は取り扱わない。

1.2 適用範囲

AquaDraft本体、公式ブログ(blog.aqua-draft.com)、告知に用いる各SNS媒体、ソースコードリポジトリ、およびアクセス解析基盤を含む運用業務全般を対象とする。

1.3 対象読者

  • プロジェクトオーナー(承認者)
  • 本プロジェクトの実行担当(Claude)
  • 連載記事の読者(本書は成果物として公開される)

1.4 用語定義

用語 定義
AquaDraft 本プロジェクトの対象となる水槽レイアウトシミュレーター。Webブラウザ上で動作する
オーナー プロジェクトオーナー(やまかず)。本プロジェクトに関与する唯一の人間であり、最終承認者
Claude 実行・分析・自動化設計を担うAI。本プロジェクトの実務担当
素材 AquaDraft上で配置できる水草・石・流木・底床などの3Dモデルおよびその情報
素材追加 新規素材を調査・選定・制作しAquaDraftへ組み込み、告知するまでの一連の業務
As-Is 現行の業務の姿。現状分析の対象
To-Be 実現後のあるべき業務の姿
AI評価カテゴリ AIに任せてよい度合いを示す判定区分。高信頼・中信頼・低信頼・自動化禁止の4段階
自動化分類 業務ごとの自動化の度合い。A(完全自動)からE(自動化しない)の5段階
MoSCoW 要求の優先度分類。Must(必須)、Should(推奨)、Could(可能なら)、Won’t(今回は対象外)
回帰テスト 変更によって既存の動作が壊れていないことを確認するテスト

1.5 関連文書

文書番号 文書名 位置づけ
ADO-PL-001 AquaDraft Ops Automation 企画書 本書の上位文書。プロジェクトの目的・体制・スケジュールを定義
ADO-RD-001 AquaDraft Ops Automation 要件定義書 本書の下位文書。本書の要求を要件へ展開

2. プロジェクト概要

2.1 背景

AI技術の普及により、知識の整理・説明・定型作業の遂行はAIが高い水準で実施できるようになった。その結果、知識の保有を証明する手段(資格等)の相対的な価値は低下している。

一方で、AIに何ができて何ができないかを見極め、実際の業務へ組み込む判断は、知識の量では代替できない。この判断力を証明する手段は現時点で確立されていない。

本プロジェクトは、実在する個人開発サービスの運用業務を対象に、この判断を実践し、結果を記録することで、判断力そのものを実績として示すことを狙いとする。

2.2 目的

AquaDraftの運用業務に対し、AIの能力を正しく評価したうえで自動化を組み込み、人間の関与を可能な限り削減する。削減できた業務と、検証の結果として人間に残した業務の双方を、判断理由とともに記録する。

2.3 ゴール

区分 内容
実践ゴール Claudeの機能(タスク管理、サブエージェント、スキル、定期実行、監視等)を用いて運用業務の自動化を実現すること
最終ゴール オーナーが関与しなくてもAquaDraftの運営が停止しない状態にすること

最終ゴールは「作業負荷の軽減」ではなく「関与の不在に耐える」ことを指す。負荷軽減を目標に置いた場合、部分的な改善で目標が達成されたと判断され、検証が途中で止まるおそれがあるため、意図的に厳しい水準を設定する。

2.4 ステークホルダー

ステークホルダー 役割 本プロジェクトにおける関心事
オーナー プロジェクトオーナー、最終承認者、現行業務の全担当者 夜間の限られた稼働時間で運営を継続できること。品質を落とさないこと
Claude 実行・分析・自動化設計 委譲された業務を、追跡可能な形で確実に遂行すること
AquaDraft利用者 サービス利用者 素材が継続的に追加されること。不具合が放置されないこと
連載記事の読者 成果物の閲覧者 実践の過程と判断理由が、成功・失敗を問わず開示されること

本プロジェクトに関与する人間はオーナー1名のみである。組織的な分業は存在せず、「人間の関与を削減する」対象は最初からオーナー自身に限定される。

3. 現行業務分析(As-Is)

3.1 対象業務領域

領域 含まれる業務
開発運用 コード変更の記録、課題管理、リリース作業
サービス運用 アクセス監視、不具合検知、稼働状態の把握
発信運用 リリース告知、SNS投稿、ブログ記事の作成
改善活動 改善案の抽出、優先順位付け
素材制作 素材の調査・選定・制作・組み込み
保守・利用者対応 依存パッケージの更新、脆弱性対応、バックアップと復旧、利用者からの問い合わせ対応

3.2 業務一覧

業務ID 業務 現行の担当 実施頻度(現状) 記録の有無
BIZ-01 素材追加 オーナー(9工程)、Claude(3工程) 不定期(希望は週1回) コミットログのみ
BIZ-02 不具合修正 オーナー、Claude 発見時のみ コミットログのみ
BIZ-03 UI改修・機能追加 オーナー、Claude 2026年7月末で一段落 コミットログのみ
BIZ-04 課題・改善案の管理 オーナー 不定期 記録なし(リポジトリの課題管理機能は未使用)
BIZ-05 告知(SNS 3媒体) オーナー 不定期・媒体ごとにばらつき 記録なし
BIZ-06 ブログ記事作成(4種類) オーナー、Claude 不定期 記事そのもの
BIZ-07 アクセス解析の確認 オーナー 不定期 記録なし
BIZ-08 本番反映 オーナー 都度 コミット履歴
BIZ-09 運用状態の把握 実施していない なし なし
BIZ-10 セキュリティに関わる変更 オーナー 発生時のみ コミットログのみ
BIZ-11 ユーザー投稿レイアウトの受付・審査・掲載 オーナー 応募時のみ メールのみ(受信箱の外に記録なし)
BIZ-12 多言語コンテンツの維持(日英2本立て) オーナー、Claude 記事・固定ページの作成時に必ず発生 記事そのもの(対応関係の記録なし)
BIZ-13 辞典記事の維持 オーナー 2026-07-16の一括更新以降なし 記事そのもの
BIZ-14 ヘルプページの追随 オーナー 機能追加時(最終更新2026-07-09) 記事そのもの
BIZ-15 分類の整理(カテゴリ・タグ) 実施していない なし なし
BIZ-16 依存パッケージの更新と脆弱性対応 実施していない なし なし
BIZ-17 バックアップと復旧 実施していない(リポジトリの履歴以外に取得なし) なし なし
BIZ-18 一般の問い合わせ対応 受付経路が存在しない なし なし

3.3 業務フロー(BIZ-01 素材追加)

現行は13工程で構成される。

工程No 工程 担当 種別 備考
1 人気素材の調査 オーナー 判断 情報源は記事検索、動画、SNS投稿、レイアウト作例、水草通販サイト
2 現状の素材の確認 オーナー 確認 AquaDraft上の既存素材と突き合わせ
3 追加対象の選定(1回あたり1件から3件) オーナー 判断 優先度は人気素材の網羅、次にタイプ違い、その後ニッチ
4 参考画像の収集 オーナー 作業
5 AIによる画像生成の試行 オーナー 作業 著作権の観点から、収集画像をそのまま用いない方針による
6 生成物のクオリティ判定 オーナー 判断(承認) 判定基準は実物イメージからの乖離
7 3Dモデル化 オーナー 作業 外部サービスを利用
8 モデルの引き渡し オーナー 作業
9 モデルの圧縮 Claude 作業
10 AquaDraftへの実装 Claude 作業
11 動作確認 Claude 作業
12 本番反映 オーナー 承認
13 告知 オーナー 作業

13工程のうち9工程をオーナーが担っており、うち8工程が前半に集中している。Claudeへの委譲は、モデル引き渡し以降の機械的な工程に限られる。

3.4 告知業務の現状(BIZ-05、BIZ-06)

媒体 名義 言語 投稿形式 実施状況
X 他チャンネルとの共用アカウント 日本語 短文、ハッシュタグ、画面キャプチャ1枚 直近2件。表示数は47から61、固定投稿のみ763
Facebook AquaDraft専用ページ 日本語・英語を別投稿 カテゴリ別に整理した更新内容、動画または複数画像 日英2本ずつを2回
Pinterest 個人名義 日英混在 タイトルと説明文。粒度が投稿ごとに不統一 ピン4件で停止
公式ブログ AquaDraft公式 日本語(英語版サイトあり) 告知記事、レイアウト作例、素材解説 直近の告知は2026-07-06

素材追加時に全媒体へ配信するという運用ルールは存在しない。投稿頻度、言語の出し分け、説明の粒度がいずれも媒体ごとに不統一である。

3.5 開発業務の現状(BIZ-02、BIZ-03)

観点 現状
不具合の検知経路 オーナーの目視のみ。大半は他作業の動作確認時に副次的に発見
利用者からの報告経路 存在しない
自動テスト 未導入。テストファイル0件、テストフレームワーク未導入
CI/CD デプロイ用の自動化のみ
自動化された品質担保 型チェックと静的解析まで
機能・UIの進捗 2026年7月末で必要な機能とUIが出揃い、現在は素材追加フェーズ
継続課題 操作の軽快さと素材のリアリティのトレードオフ最適化。判定はオーナーの体感に依存

アクセス解析上、利用者が存在しないわけではないが、声が到達する経路が存在しない。

3.6 発信業務の現状(BIZ-06)

種類 目的 現状
リリース告知 アップデートの周知 更新のたびに作成
素材辞典 検索経由のリーチ向上 初期にまとめて作成済み。今後は素材追加に合わせて1素材1本の方針
レイアウト作例 実現できることの提示、権威性とファンの醸成 公開済み。保存データを配布し、読み込めば同じ状態から作業を開始できる
ノウハウ アクアリウム全般の知識提供、アフィリエイト収益 未着手

3.7 保守・継続業務の現状(BIZ-16からBIZ-18)

初版の業務一覧には、運用を継続するために不可欠でありながら、現在いずれも実施されていない3業務が抜けていた。実施記録が無いために棚卸しの対象から落ちたものである。以下に工程まで分解する。

BIZ-16 依存パッケージの更新と脆弱性対応

工程No 工程 現行の担当 移行後の担当 実行手段
1 脆弱性と更新の検知 実施していない 機械 定期タスク
2 影響範囲の判定 実施していない Claude スキル
3 更新の適用 発生時にオーナー Claude スクリプト
4 回帰テスト 実施していない 機械 スクリプト
5 オーナーへの報告 実施していない 機械 即時報告(義務。6.3)
6 本番反映 オーナー オーナー 自動化しない(CON-05)

BIZ-17 バックアップと復旧

工程No 工程 現行の担当 移行後の担当 実行手段
1 バックアップの取得 実施していない 機械 定期タスク
2 取得結果の検証 実施していない 機械 スクリプト
3 復旧手順の維持 実施していない Claude スキル
4 復旧の実行 実施していない オーナー 自動化しない
5 失敗時のオーナーへの報告 実施していない 機械 即時報告(義務。6.3)

BIZ-18 一般の問い合わせ対応

工程No 工程 現行の担当 移行後の担当 実行手段
1 問い合わせの受付 経路が存在しない 機械 受付経路の新設
2 内容の分類 実施していない Claude スキル
3 回答の下書き 実施していない Claude スキル
4 返信 実施していない オーナー 承認のうえ送信
5 課題としての起票 実施していない 機械 スクリプト
6 受信時のオーナーへの報告 実施していない 機械 即時報告(義務。6.3)

BIZ-11のユーザー投稿レイアウトの受付とは別である。BIZ-11は掲載応募の窓口であり、BIZ-18はそれ以外の一般の問い合わせを指す。

3.8 制約条件

制約ID 制約 内容
CON-01 稼働時間 2026年8月より平日日中は就業のため作業不可。稼働は夜間から深夜のみ
CON-02 AI利用枠 素材追加1回あたりAI利用枠を3時間から4時間分消費。上限到達時は最大5時間の待機が発生
CON-03 外部データ取得 動画サイトおよびSNS投稿の自動取得は不可。情報源として当てにできない
CON-04 商品情報の取得 商品ページからの画像・価格の自動取得は行わない。リンクのみで構成する
CON-05 本番反映 本番反映はオーナーが手動で実施する既存ルールがある
CON-06 実施体制 人的リソースはオーナー1名のみ。増員の予定はない

なお、2026年5月から7月の3か月間は稼働時間を確保できたため集中的な開発が可能であり、6月のコード更新は131件に達した。しかし2026年8月の更新は0件であり、CON-01の影響は既に顕在化している。

4. 課題分析

4.1 課題一覧

課題ID 課題 発生元業務 影響度 根拠
ISS-001 素材追加13工程のうち9工程がオーナーに集中し、稼働制約下でスループットが確保できない BIZ-01 高 3.3、CON-01、CON-02
ISS-002 不具合の検知経路がオーナーの目視のみであり、オーナーが手を止めると検知が停止する BIZ-02 高 3.5
ISS-003 自動テストが未整備であり、人手による確認を外すと品質を担保できない BIZ-02、BIZ-03 高 3.5
ISS-004 利用者からの不具合報告の受付経路が存在しない(レイアウト応募の経路はBIZ-11として稼働中) BIZ-02、BIZ-04 中 3.5、2026-08-29のサイト実機確認
ISS-005 素材情報が構造化されておらず、告知文・辞典記事を都度手作業で書き起こしている BIZ-05、BIZ-06 高 3.4、3.6
ISS-006 告知が定常運用になっておらず、媒体ごとに頻度・言語・粒度が不統一である BIZ-05 中 3.4
ISS-007 課題および意思決定の経緯が追跡できない(記録がコミットメッセージのみ) BIZ-04 中 3.2
ISS-008 アクセス解析の定期確認フローがなく、異常の発生に気づけない BIZ-07 中 3.2
ISS-009 運用状態を俯瞰する定期レポートが存在しない BIZ-09 中 3.2
ISS-010 操作の軽快さと素材のリアリティのトレードオフ判定が体感に依存し、数値化されていない BIZ-03 中 3.5
ISS-011 改善案の抽出元が確立されていない BIZ-04 低 3.2
ISS-012 SNSアカウントの名義が媒体ごとに分散している BIZ-05 低 3.4
ISS-013 ユーザー投稿の受け口がメールのみで、応募を貯める仕組みも状態を追う仕組みもなく、見落とすと応募が失われる BIZ-11 高 2026-08-29のサイト実機確認
ISS-014 多言語プラグインがなく、記事・固定ページ1本につき日英2本の複製が手作業で発生する BIZ-12 高 同上
ISS-015 辞典記事34本がタイトルに価格を焼き込んでおり、Amazonからの自動取得が禁止のため更新手段が存在しない BIZ-13 中 同上
ISS-016 機能追加のたびに日英2枚のヘルプ更新が必要だが、業務として定義されていない BIZ-14 中 同上
ISS-017 カテゴリとタグが崩れており、公開中の記事が意図しない分類に入っている BIZ-15 低 同上
ISS-018 素材追加に対応する辞典記事が未作成のまま残り、英語版の辞典は0本である BIZ-01、BIZ-13 中 同上
ISS-019 公開中のページに未修正の不具合が残っている(英語記事のタイトル文字化け、英語応募フォームの日本語表示) BIZ-12 中 同上
ISS-020 依存パッケージの更新と脆弱性対応が業務として存在せず、脆弱性が公表されても気づく経路がない BIZ-16 高 2026-08-30の業務一覧の見直し
ISS-021 バックアップがリポジトリの履歴以外に存在せず、復旧手順も定義されていない BIZ-17 高 同上
ISS-022 掲載応募以外の問い合わせ窓口が存在せず、利用者の声が届く経路がない BIZ-18 中 同上

4.2 課題の構造

課題は以下の3系統に整理できる。

系統1: 人間への集中(ISS-001、ISS-005、ISS-006)

素材追加の前半工程と告知業務がオーナーに集中している。この2つは本来つながっており、素材情報が構造化されていないこと(ISS-005)が、告知を手作業に固定している。素材情報を構造化データとして保持できれば、告知4媒体への配信と素材辞典記事の生成は同一の材料から派生できる。すなわち発信業務の自動化とは、投稿文を生成する仕組みではなく、素材情報を構造化して保持する仕組みの構築である。

系統2: 検知の欠落(ISS-002、ISS-003、ISS-004、ISS-008、ISS-009)

異常を検知する経路が、いずれもオーナーの目視に依存している。最終ゴール(オーナーの関与なしに運営が停止しない状態)に対して、本系統は直接的な阻害要因である。人間による確認を外す以上、変更箇所を中心とした確認では不足し、操作の流れを通しで検証する回帰テストが必須となる。

系統3: 記録・可視化の欠落(ISS-007、ISS-010、ISS-011)

判断の根拠と経緯が記録されていない。本プロジェクトは判断そのものを成果物とするため、記録の欠落は成果の欠落に直結する。

5. 要求事項

5.1 要求の分類

分類 定義
業務要求 業務の進め方に関する要求
機能要求 実現すべき機能に関する要求
品質要求 品質・安全性・セキュリティに関する要求
運用要求 運用体制・報告に関する要求

優先度はMoSCoW法により、Must(必須)、Should(推奨)、Could(可能なら)、Won’t(今回は対象外)の4段階で付与する。

5.2 要求一覧

要求ID 分類 要求事項 優先度 対応課題
REQ-001 業務要求 素材追加業務の前半工程(調査・選定・素材準備)を自動化し、オーナーの関与をクオリティ判定と本番反映の承認に限定できること Must ISS-001
REQ-002 機能要求 素材情報(名称、カテゴリ、特徴、追加日等)を構造化データとして一元管理できること Must ISS-005
REQ-003 機能要求 構造化された素材情報から、各媒体向けの告知文および素材辞典記事の下書きを生成できること Must ISS-005、ISS-006
REQ-004 業務要求 素材追加を契機として、告知が全対象媒体へ定常的に実施されること Should ISS-006
REQ-005 品質要求 操作の一連の流れを最初から最後まで再現する回帰テストを整備し、自動実行できること Must ISS-003
REQ-006 機能要求 不具合を人手の目視によらず検知できること Must ISS-002
REQ-007 機能要求 利用者からの不具合報告・要望を受け付ける経路を設けること Should ISS-004、ISS-011
REQ-008 機能要求 アクセス解析および検索パフォーマンスのデータを定期取得し、異常値・急変を検知できること Must ISS-008
REQ-009 機能要求 開発ログから課題および改善案の下書きを生成し、追跡可能な形で記録できること Should ISS-007、ISS-011
REQ-010 機能要求 週次の運用レポートを自動生成できること Must ISS-009
REQ-011 運用要求 自動処理の結果がオーナーに届くこと。異常時は即時に報告し、正常時は週次レポートに集約すること Must ISS-009
REQ-012 機能要求 描画性能を数値で測定し、素材追加のたびに影響を自動計測して、閾値超過時に報告できること Should ISS-010
REQ-013 機能要求 リリースノートおよびブログ記事の下書きを自動生成できること Should ISS-005
REQ-014 業務要求 すべてのタスクについて、着手前にAI評価カテゴリを判定し、判定結果を記録できること Must 2.2
REQ-015 品質要求 すべての自動処理について、実行ログを後から追跡できること Must ISS-007
REQ-016 業務要求 AI評価カテゴリおよび自動化分類の判定を、運用実績に基づいて見直せること。人間の関与を増やす方向への見直しを正当な結論として扱うこと Must 2.2
REQ-017 品質要求 素材のクオリティ判定はオーナーの承認を必須とすること Must 3.3
REQ-018 品質要求 本番反映(コード・記事とも)を自動化しないこと。常にオーナーが最終確認すること Must CON-05
REQ-019 品質要求 セキュリティに関わる変更を自動化しないこと。常に人間が担うこと Must 2.2
REQ-020 品質要求 秘匿情報(APIキー、パスワード等)をAIに送らず、ログにも出力しないこと Must 2.2
REQ-021 運用要求 成果物をWordPress上で管理すること。個人アカウント配下のクラウドストレージを使用しないこと Must 2.2
REQ-022 運用要求 素材追加1回の処理が、AI利用枠の1日分に収まるよう設計すること Should CON-02
REQ-023 運用要求 自動処理が失敗した場合の代替手段(フォールバック)を定義すること Should ISS-002
REQ-024 業務要求 SNSアカウントの名義および運用方針を整理すること Could ISS-012
REQ-025 機能要求 掲載応募および一般の問い合わせを受け付け、受信を記録し、対応状態を追跡できること Must ISS-013、ISS-022
REQ-026 機能要求 日本語版と英語版の対応関係を記録し、片方だけが更新された状態を検知できること Must ISS-014
REQ-027 機能要求 辞典記事のうち更新手段が存在しない情報を本文から切り離し、内容が古くなった記事を検知できること Should ISS-015、ISS-018
REQ-028 機能要求 機能の変更を検知し、該当するヘルプページの改訂下書きを生成できること Should ISS-016
REQ-029 機能要求 カテゴリとタグの現状を抽出し、整理案を生成できること Could ISS-017
REQ-030 機能要求 公開中のページの不具合を定期的に検知できること Should ISS-019
REQ-031 機能要求 依存パッケージの脆弱性および更新を検知し、影響範囲の判定と回帰テストまで自動で実施できること Must ISS-020
REQ-032 機能要求 バックアップを定期取得し、取得結果を検証できること。復旧手順を維持すること Must ISS-021
REQ-033 運用要求 依存パッケージの更新と脆弱性対応、バックアップと復旧、一般の問い合わせ対応の3業務は、正常終了時も含め発生時点でオーナーへ報告すること Must ISS-020、ISS-021、ISS-022

5.3 要求と課題の対応(カバレッジ確認)

課題ID 対応する要求ID 充足状況
ISS-001 REQ-001 充足
ISS-002 REQ-006、REQ-023 充足
ISS-003 REQ-005 充足
ISS-004 REQ-007 充足
ISS-005 REQ-002、REQ-003、REQ-013 充足
ISS-006 REQ-003、REQ-004 充足
ISS-007 REQ-009、REQ-015 充足
ISS-008 REQ-008 充足
ISS-009 REQ-010、REQ-011 充足
ISS-010 REQ-012 充足
ISS-011 REQ-007、REQ-009 充足
ISS-012 REQ-024 充足(優先度Could)
ISS-013 REQ-025 充足
ISS-014 REQ-026 充足
ISS-015 REQ-027 充足
ISS-016 REQ-028 充足
ISS-017 REQ-029 充足(優先度Could)
ISS-018 REQ-027 充足
ISS-019 REQ-030 充足
ISS-020 REQ-031、REQ-033 充足
ISS-021 REQ-032、REQ-033 充足
ISS-022 REQ-025、REQ-033 充足

未対応の課題は存在しない。

版数1.0の時点では、この表がISS-012までで止まっていた。ISS-013からISS-019は2026-08-29のサイト実機確認で追加された課題であり、追加時に要求への展開とこの表の更新が行われていなかった。版数1.1で要求REQ-025からREQ-030を起こし、対応を確定させた。

6. To-Be方針

6.1 基本方針

AIの能力を業務単位で評価し、評価結果に応じた自動化の度合いを適用する。評価と適用の具体的な基準は要件定義書(ADO-RD-001)にて定義する。

自動化を試みた結果、効率またはリスクの観点から人間が担うべきと判断された業務については、人間へ戻す。これを失敗ではなく、実践と検証を経た正当な結論として扱い、判断理由を記録する。

6.2 人間に残す業務

以下の3業務は、検証を経ずとも人間に残すことを前提とする。

業務 理由
素材のクオリティ判定 シミュレーターとしての価値の根幹に関わる。実物イメージからの乖離判定は、正解の基準自体が定量化できていない
レイアウト作例の制作 創作行為であり、権威性とファンの醸成という目的上、制作者の意図が価値の源泉である
本番反映の承認 失敗時に取り返しがつかない。既存ルールであり変更しない

上記に加え、セキュリティに関わる変更は自動化の対象外とする。

6.3 発生時点で必ず報告する業務

以下の3業務は、自動化の度合いにかかわらず、事象が発生した時点でオーナーへ報告する。報告を省略しない。

業務 報告のきっかけ 報告に含める内容
依存パッケージの更新と脆弱性対応 脆弱性の検知時、更新の適用時 対象、深刻度、影響範囲、適用の可否
バックアップと復旧 取得の失敗時、検証の失敗時、復旧を要する事態の発生時 事象、対象範囲、直近で正常に取得できた時点
一般の問い合わせ対応 問い合わせの受信時 送信者の区分、要旨、返信の要否

これらは処理が正常に完了した場合も報告する。要件定義書6.2の「正常時は即時通知しない」方針に対する例外として固定する。オーナーが事実を知らないまま処理が進む状態を作らないことが目的であり、自動化の対象から外すという意味ではない。

6.4 段階的移行方針

一括での自動化は行わず、段階的に適用範囲を拡大する。各段階で効果を測定し、次段階の設計へ反映する。段階の区切りは企画書(ADO-PL-001)のPhase定義に従う。

7. スコープ

7.1 対象

  • AquaDraftの運用業務(3.1に定める6領域)
  • 運用業務を支える自動化の仕組みおよび記録・報告の仕組み
  • 上記の設計・実装・運用を通じて得られた判断と知見の記録

7.2 対象外

項目 対象外とする理由
AquaDraft本体の新規機能開発 本プロジェクトの目的は運用業務の自動化であり、製品開発ではない。必要な機能は2026年7月末で出揃っている
収益化施策の立案・実施 本プロジェクトの評価軸は自動化の達成度であり、収益ではない
AquaDraftのインフラ移行・技術スタックの刷新 現行構成で目的を達成できる
他サービスへの横展開 本プロジェクトの検証完了後に別途判断する
ドメインとサーバーの契約更新 主たる運用業務の自動化を先に成立させる。必要になった時点でオーナーが改めて指示する
アフィリエイトと収益の管理 同上。主たる運用が回ることを前提とし、本プロジェクトでは扱わない

8. 前提条件・制約条件

8.1 前提条件

前提ID 前提条件
PRE-01 オーナーは夜間から深夜の時間帯に稼働できる
PRE-02 Claudeは継続して利用可能であり、利用枠の範囲内で稼働する
PRE-03 AquaDraftの現行機能は安定して稼働しており、大規模な改修を要しない
PRE-04 アクセス解析基盤は導入済みであり、データ取得が可能である
PRE-05 記事投稿基盤は稼働済みであり、既存の投稿経路を利用できる

8.2 制約条件

3.8に定めるCON-01からCON-06をそのまま制約条件として引き継ぐ。

9. 未決事項

番号 未決事項 決定期限 決定者
OPEN-01 最初に着手する対象業務。週次運用レポートの自動生成を先行させるか、素材追加業務の自動化を先行させるか 要件定義書の承認まで オーナー
OPEN-02 利用者からの報告受付経路の方式(フォーム、リポジトリの課題管理機能、SNSのいずれか) 該当機能の設計着手まで オーナー
OPEN-03 描画性能の測定指標および閾値の定義 該当機能の設計着手まで Claudeが案を作成しオーナーが承認
OPEN-04 SNSアカウント名義の整理方針(REQ-024) 未定(優先度Could) オーナー

以上