家でハンドドリップを続けていると、道具よりも先に「豆をどこで買うか」で手が止まります。近所で買えるのは無印良品かカルディくらい、通販で探すと今度は選択肢が多すぎて決められません。結局いつもの一袋に戻る、というのを何度も繰り返してきました。
そんなときに見つけたのが、パナソニックの「コーヒーメーカー&コーヒー豆コース」です。全自動コーヒーメーカーを買わずに借りて、世界各国のコーヒー豆が定期的に届くというサブスクリプションでした。
結論から書くと、これは万人向けのサービスではありません。ただ、ある一種類の人にはかなり刺さる形をしています。この記事では、どこが良くて、どこが物足りないのかを、手挽きハンドドリップ派の目線で正直に整理します。
その前に、コーヒーツールを2つ更新しました
本題に入る前に、当サイトのコーヒー関係のツールを少しだけ触ったので報告させてください。
ひとつめはコーヒータイマーです。粕谷哲さんの4:6メソッドに特化したタイマーですが、設定項目の並び順を「豆の種類、挽き目、豆の量、味の好み、濃さ」に入れ替えました。上から順に決めていけば設定が終わる並びです。淹れる直前に迷わないことを最優先にしています。
ふたつめは新しく公開した挽き目コンバーターです。レシピに「中細挽き」と書かれていても、自分のミルで何クリックなのかは分かりません。それを手持ちのミルの目盛りに変換するツールです。タイマーの挽き目の欄からも開けるようにしてあります。必要ない人は飛ばして構いません。
どちらもブラウザで開くだけで使えます。インストールも登録も不要です。
パナソニックの「コーヒーメーカー&コーヒー豆コース」とは
ざっくり言うと、全自動コーヒーメーカーの本体と、世界各国のコーヒー豆が毎月の定額で届くサービスです。本体は買い取りではなく、まず借りる形から始まります。
届くコーヒーメーカーは、パナソニックの沸騰浄水コーヒーメーカー NC-A58-K(ブラック)です。水道水のカルキをあらかじめ沸騰させて抜いてから淹れるタイプで、豆から挽いて淹れるところまで自動でやってくれます。
まあでも、NC-A58の評判はAmazonレビューやコーヒー系YouTuberさんの動画いくつか見ればわかると思います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 月額 | 1,980円(税込) |
| 届く本体 | 沸騰浄水コーヒーメーカー NC-A58-K(ブラック)/4カップ・545ml/約3.2kg |
| 届く豆 | 世界各国のコーヒー豆を隔月で約1,000円分(おおよそ50g×2種類=100g) |
| デカフェ | デカフェを選べるコースもある |
| 本体の扱い | 最低利用期間のあとは返却できる。続ければ買い取りも可能 |
| 途中でやめる場合 | 最低利用期間内の解約には別途費用がかかる |
| 付属品 | 計量スプーン、ペーパーフィルター |
いちばんの利点は「家電を完全には所有しないこと」
このサービスで一番良いと思ったのは、豆でもコーヒーの味でもなく、コーヒーメーカーを最後まで自分のものにしなくていいところです。
家電を買うというのは、その家電を捨てるところまで引き受けるということです。使ってみて自分に合わなかった場合、買った本人がリサイクルの手配をするか、写真を撮って中古で売るか、どちらかをやらなければいけません。この後始末が地味に重く、「合わなかったらどうしよう」という迷いの正体はだいたいここにあります。
借りる形なら、最低利用期間を過ぎたあとは返せば終わりです。逆に気に入って手放したくなくなったら、そのまま続けて買い取ることもできます。合わなかったときの出口が最初から用意されている、というのは思っている以上に大きい利点です。
全自動コーヒーメーカーは、まさに好みが割れる家電です。挽きたてが自動で出てくる便利さを取る人もいれば、洗う手間の多さを嫌がる人もいます。使ってみないと分からない部類のものなので、試す手段として借りる形が用意されているのは理にかなっています。
で、このNC-A58なんですが白も展開してて、サブスクで白を指定できるかはわかんないんすよね。
届く豆は「ちゃんとしている」のか
定期便で届く豆と聞くと、量販店で売っている大袋のブレンドが小分けで届くようなものを想像するかもしれません。ですが、パナソニックの取り扱い豆の一覧を見ると、銘柄の数はかなりあります。
ここで大事なのは、「ちゃんとしている豆」とは何なのかを自分で判断できることです。値段や見た目ではなく、商品ページに書かれている情報の細かさで判断できます。次の4つが書いてあるかどうかを見てください。
1. 生産国だけでなく、地域や農園まで書いてある
「ブラジル」だけで終わらず、州や地区、農園名、生産者名まで書いてあるかどうかです。ここまで書けるということは、産地の特定できるロットを買い付けているということです。産地をまとめて混ぜた大量生産の豆では、そもそもこの情報が存在しません。
ここでひとつ、4:6メソッドの粕谷哲さんが動画で話していたことを思い出しました。市販の豆の袋にある「生産国名:ブラジル、コロンビア、他」の、あの「他」が気になる、という話です。言われてみれば確かにそのとおりでした。
ブレンドの生産国は使用量の多い順に書けばよく、残りは「他」とまとめられます。つまり「他」の中身が何なのかは、買った側には分かりません。安い豆が悪いという話ではありませんが、「他」で終わる豆は、おいしかったときに同じ味をもう一度指名できません。産地が最後まで書いてある豆は、当たりを引いたらまた買えます。
2. 品種が書いてある
ブルボン、カトゥーラ、ティピカ、ゲイシャといった品種名です。品種はぶどうでいうところのメルローやピノ・ノワールにあたるもので、味の方向性を決める一番大きな要素のひとつです。これを書いている売り手は、味を説明できる売り手です。
3. 精製方法が書いてある
ウォッシュド、ナチュラル、ハニープロセスといった、収穫した実から豆を取り出す工程の違いです。同じ農園の同じ品種でも、ここが変わると味がはっきり変わります。ウォッシュドはすっきりした酸味、ナチュラルは果実感や甘みが強く出やすい、というのが大まかな傾向です。ここまで書いてあれば、味の想像がつく状態で選べます。
4. 焙煎度が書いてある
浅煎り、中煎り、深煎りの表記です。焙煎度は淹れ方に直結します。当サイトのコーヒータイマーでも、豆の種類に合わせてお湯の温度の目安を変えているくらいには効いてくる要素です。
この4つが揃って書かれている豆は、少なくとも「なんとなく仕入れて袋詰めした豆」ではありません。一覧を眺めて、この情報が書かれている銘柄が多いなら、その定期便は信用してよいと判断できます。逆に「ブレンド」「マイルド」しか書いていない一覧なら、値段相応です。判断の物差しとして持っておくと、この先どこで豆を買うときにも使えます。
正直に書きます。2か月で100gは、飲む人には少ないです
良いところばかり書くのは不誠実なので、引っかかった点も先に書きます。届く豆の量です。
隔月で約1,000円分、おおよそ50g×2種類の100gが届きます。一方、ハンドドリップで1杯淹れるのに使う豆はだいたい15gから20gです。毎日1杯淹れる人なら、100gは5日でなくなります。
隔月ということは、次に届くまで約60日です。つまり、このサブスクだけで日々のコーヒーをまかなうことは、量の面で最初から想定されていません。ここを「豆が届くサービス」だと思って申し込むと、確実に物足りなく感じます。
そうではなく、「普段の自分では絶対に選ばない豆が、2か月に1度届く」ものだと捉えるのが正しい読み方です。50g×2種類という量も、飲み比べて終わるにはちょうどよく、鮮度が落ちる前に飲み切れる量です。主食ではなく、月替わりのおすすめ品という位置づけになります。
それでも得になるのは、こういう人です
ここまでを踏まえて、自分がすすめたい相手ははっきりしています。すでに手挽きミルとドリッパーを持っていて毎日ハンドドリップしているけれど、豆は無印良品やカルディで買うくらいで、そこから先へは広げていない人です。
この人にとって、月額1,980円は次のように効きます。
器具はもう持っているので、全自動は「必需品」ではなく「増える楽しみ」
すでにハンドドリップができる以上、全自動コーヒーメーカーは無くても困りません。だからこそ買い切りで所有するには動機が弱く、逆に借りる形とは相性が良いということになります。忙しい朝はボタンひとつで全自動にして、休みの日はゆっくり手で挽けます。この使い分けができるようになるだけでも、実際の生活はかなり変わります。
豆は自分でも買い続けるので、100gが少なくても困らない
普段の豆は今まで通り自分で買えばいいので、量が足りないという弱点がそのまま消えます。届く豆は補給ではなく、自分では選ばなかった一本を試す機会になります。無印とカルディの往復から抜け出すきっかけとしては、これ以上ないくらい手軽です。
挽き方を自分で決められるので、届いた豆を活かせる
手挽きに慣れている人は、豆に合わせて挽き目を変えられます。届いた豆が浅煎りなら細かめにして温度を上げる、深煎りなら粗めにして温度を下げる、といった調整ができる人ほど、知らない豆が届くことの価値が上がります。ここの目盛り合わせが面倒なら、挽き目コンバーターを使ってください。
逆に、こういう人はまだ早いです
ここまでの内容を、向き不向きの形で表にまとめます。右側に当てはまる人は、いま申し込まない方がいいと思います。
| こういう人には向きます | こういう人にはまだ早いです |
|---|---|
| すでに毎日ハンドドリップしている | これからコーヒーを始めるところ |
| 豆は無印やカルディ止まりで、幅を広げたい | 豆にこだわりがなく、味の違いを楽しむ予定がない |
| 全自動を試したいが、買って後悔したくない | コーヒーメーカーを置く場所を確保できない |
| 月1,980円ぶんの娯楽費として納得できる | 豆代を安く上げたい |
| 最低利用期間を続ける前提で考えられる | 1か月だけ試して合わなければやめたい |
とくに注意したいのが最後の行です。最低利用期間が設定されていて、その期間内に解約すると別途費用がかかります。「合わなかったらすぐやめればいい」という前提で申し込むと、そこで想定外の出費になります。返却できるのは、あくまで最低利用期間を過ぎたあとの話です。
それと、これからコーヒーを始める人には、はっきり別の道をすすめます。まずは無印良品かカルディ、ドトールコーヒーあたりの豆を買ってきて、手で挽いてハンドドリップするところから始めた方が、圧倒的に安く済みます。そもそも自分がコーヒーを淹れる習慣を続けられるのかどうかも、そこで分かります。
始めるだけなら、この4つで足ります
入り口の道具は、これだけあれば十分です。全部そろえても全自動コーヒーメーカーを買うより安く収まります。
TIMEMORE 栗子C2 手挽きコーヒーミル(Amazon)/価格のわりに挽きムラが少なく、最初の1台として扱いやすいミルです。カラー展開に白があるのは大事。
HARIO V60 透過ドリッパー 02 セラミック(Amazon)/レシピの多くがこの形を前提に作られているので、最初はこれを選んでおくと情報に困りません。
HARIO V60 ペーパーフィルター 02(100枚・Amazon)/ドリッパーのサイズ(02)に合わせます。ここだけは間違えないでください。
HARIO V60 ドリップスケール(タイマー付き・Amazon)/豆とお湯を計るためのものです。目分量をやめた瞬間に味が安定します。
豆をどれにするか迷うなら、味の違いが分かりやすい浅煎りから中煎りのものを選ぶといいです。
スペシャルティコーヒー豆 エチオピア 中煎り 100g・豆のまま(Amazon)
淹れ方そのものは、コーヒータイマーに任せてしまって構いません。注ぐ量とタイミングを表示してくれるので、手順を覚える必要はありません。詳しい理論は4:6メソッドの解説記事にまとめてあります。
まとめ
パナソニックのコーヒーメーカー&コーヒー豆コースは、「全自動コーヒーメーカーを買わずに試せて、ついでに知らない豆が2か月に1度届く」サービスです。豆の量は日々の消費をまかなう水準ではないので、そこを期待すると外します。
逆に、すでにハンドドリップの習慣があって、豆の選択肢だけが広がらずに止まっている人にとっては、月額1,980円で全自動と未知の豆の両方が手に入る形になります。しかも本体を最後まで抱え込まなくて済みます。この条件がはまる人には、素直にすすめられます。
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